次のイベントではミレーナ・アグスにのビデオインタビューを提示される
ミレーナ・アグス/著
Agus,Milena
サルデーニャ出身の両親のもとジェノヴァで生まれる。現在、サルデーニャの州都カリアリ在住。高校でイタリア語と歴史を教えている。2005年、旧石器時代から続くサルデーニャの一族を描いた『Mentre dorme il pescecane(サメが眠っている間に)』でデビュー。2006年『祖母の手帖』刊行。20カ国で翻訳され、フランスでは発売後ひと月で4刷に。イタリアの代表的文学賞ストレーガ賞、カンピエッロ賞の最終候補となる。おもな作品に、『La contessa di ricotta(リコッタチーズの伯爵令嬢)』、『Sottosopra(上下逆さま)』など。
『祖母の手帖』
毎日新聞:
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不思議な語り口で語られる、小さな中篇小説である。たどたどしい語り方にじれったくなったりするが、しだいに意外に深い奥行をもつ物語であることに気づくことになる。遠い、イタリアのサルデーニャ島に生きたひとりの女性の話である。
語り方のいちばん大きな特徴は、祖母、そして祖父、父、母というふうに、家族関係の名詞で押し通されることで、語り手の孫娘「わたし」も含めて名前がつけられていないことだ。家族関係という濃密な場所から、濃密な女性が語り出される。
そして、この「祖母」がまことに魅力的な存在なのだ。若い頃、井戸に身を投げたこともあるし、自傷癖もある。頭がおかしいのではないかと周囲から見られるが、「大きくて引き締まったおっぱいと豊かな黒い髪と大きな目」をもつ美女。村に疎開してきた、サルデーニャ島最大の町・カリアリの製塩所の社員だった祖父に求婚される。祖父を愛せないからイヤだ、と抵抗するが、曽祖父母の厳命によって結婚させられる。それが一九四三年、大戦末期のこと。
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毎日新聞ウエブサイト
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Hiramatsu Yoko 平松洋子、 エッセイスト
1950年秋。サルデーニャ島から初めて本土に渡った祖母は、「石の痛み」にみちびかれて「帰還兵」と出会い、恋に落ちる。いっぽう、互いにベッドの反対側で決して触れずに眠りながらも、夫である祖父には売春宿のサービスを執り行う。狂気ともみまごう人生の奇異。それは、ひとが隠し持つ甘くて苦い媚薬なのかもしれない。いちばん大切だとわかっているのに、愛は、ついぞ自分の手もとに呼び寄せることのできないものだろうか。読み重ねるほど味わいは深くなる。身体の奥のどこか深いところ、硬く、ちいさく、鋭く、石の痛みが疼く。
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Corriere della Sera コッリエーレ・デッラ・セーラ紙
結石の治療に出かけた本土で、語り手の祖母はついに愛を知る。その相手は「帰還兵」で、「トランクは粗末だったけれど、身なりはとても上品で、片方の脚が義足で、松葉杖をついてはいたものの、とても美男子だった」。情感と詩、涙と笑い、発見と驚き、苦しみと喜びに満ちた物語であり、昔ながらの美しいサルデーニャを背景とした家族の物語でもある。
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Panorama パノラマ誌
絵画なら水彩画、音楽ならハープの独奏だろう。優雅な筆致で描かれた繊細で小さな物語。ベストセラーとなったフランスで言われたように、主人公である祖母はサルデーニャの「ボヴァリー夫人」なのだ。
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